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山下 真一*; 岩松 和宏; 前橋 佑樹*; 田口 光正; 端 邦樹; 室屋 裕佐*; 勝村 庸介*
RSC Advances (Internet), 5(33), p.25877 - 25886, 2015/02
被引用回数:12 パーセンタイル:37.81(Chemistry, Multidisciplinary)ブロマイド(Br)は水酸化(OH)ラジカルと反応して分子吸光係数の大きな中間体を生じるため、放射線誘起水中OHラジカルの反応プローブとして使われてきた。放射線照射後ナノ秒領域のOHラジカルの挙動を解明するためにはBrの濃度を高くする必要があるものの、高濃度のBrとOHラジカルの反応機構は不明であった。NOおよびArで飽和した0.9-900mMのNaBr水溶液へのパルス電子線照射によって生じたOHラジカルとBrの反応中間体の時間挙動を光吸収により計測した。BrはOHラジカルと反応してBrOH、さらにBrを生じる。異なる実験条件で得られたBrOHやBrのタイムプロファイルに対して、既報の反応速度式、速度定数を用いたスパーモデルシミュレーションを行った結果、10mM以上の高濃度条件では、2BrOHBr + 2OHの反応(反応度度定数: k=3.810 Ms)を新たに考慮することで実験結果をよく再現できることを明らかにした。
田口 光正
放射線化学, (77), p.2 - 7, 2004/05
近年、高エネルギー重イオンの利用は原子核物理研究に留まらず、材料開発や生物学,医療などさまざまな分野へと拡大している。これら応用研究の基礎として、単一イオンについて、高エネルギー重イオンと物質との相互作用における物理過程(線量分布),物理化学過程(初期活性種の挙動)及び化学過程(ラジカルによる反応収率)について明らかにすることは非常に重要である。本論文では、水中での重イオン誘起化学反応について、これまでに行われてきた研究成果を、線量分布,平均反応収率,微分反応収率及び初期活性種挙動の4つテーマに分けて、それぞれ現状や動向,今後の研究課題等について展望を述べる。
荷電粒子・RI利用解析検討委員会ワーキンググループ
JAERI-Review 2003-008, 42 Pages, 2003/03
平成15年度を目途に設置を目指している「放射線利用理論解析グループ」について、その放射線利用研究分野における位置付け,本解析グループが進めていく研究と、これまで高崎研において行なわれてきた解析研究とのかかわりなどについてまとめる。これまで実験的手法を用いて生み出されてきた多くの実用的成果を活用し発展させるために、まず、荷電粒子の物質への反応過程や放射線照射効果などの解析から、中核的要素のみを抽出し単純化したモデルを構築する。そして、そのモデルに基づいて理論解析を進め、導出された計算結果を実験系へフィードバックし検証実験等をすることによって、構築したモデルの妥当性を検証する。最終的には、得られた特定の系に関するモデルを汎用化・普遍化させることにより、汎用理論化を推し進め、他の系への応用、延いては新技術開発の促進を目指すものである。
勝村 庸介*
PNC TJ1602 98-001, 134 Pages, 1998/03
高レベル廃棄物の地層処分における健全性の確保のためには地下水の化学環境の把握が重要で、化学環境に及ぼす重要な因子として地下水中での放射線誘起反応の検討が必要となる。水溶液中での幾つかの反応系の放射線反応のリストを再整備した。炭酸イオンは地下水共通の溶存イオンであるため、炭酸水溶液の放射線反応の検討が重要となり、その放射線照射により炭酸ラジカル(HCO3・orCO3-・)が生成するが、このpKa値には従来異なった評価がなされていた。レーザーフォトリシス、パルスラジオリシス法により、pKa値を9.50.2と決定し、種々のイオンとの反応を測定した。さらに、ガラス固化体周囲の放射線分布を考慮したときの放射線分解生成物の空間挙動シミュレーションを実施し、ベントナイト中の拡散定数が大きく影響することを明らかにしている。最後に、炭酸水溶液の放射線照射後生成するギ酸、シュウ酸生成量評価実験の初期データも含めた。
館盛 勝一; 北村 竜明*
JAERI-Data/Code 96-030, 116 Pages, 1996/10
様々な原子価のウラン、プルトニウム、ネプツニウム、テクネチウム等が共存する硝酸水溶液系において進行する化学反応:酸化・還元反応、放射線化学反応、不均化反応(全部で68種)を、速度論的に追跡するシミュレーションコード:REACT-Modを開発した。ここで採用した数値解法は、速度式の常微分方程式を修正Porsing法で解く純速度論モデルと部分平衡論(Two step modelによる)モデルがあり、前者のみに硝酸水溶液の放射線化学反応式(27個)が組込んである。計算実行時にどちらのモデルを使うかを選択する。この報告書は、REACT-Modのモデルの概要や内容の説明のみならず、プログラム利用者への手引きをも兼ねている。
清水 雄一; 永井 士郎
Applied Radiation and Isotopes, 41(5), p.457 - 461, 1990/00
モレキュラーシーブ5A存在下でメタンを電子線照射した時の生成物収量に及ぼす亜酸化窒素の添加効果を調べた。6mol%の亜酸化窒素を含むメタンを480Cで電子線照射すると、CおよびC炭化水素が選択的に生成するとともに、エチレンおよびプロピレンがエタンおよびプロパンよりも優先的に生成することを見出した。亜酸化窒素の添加によるメタンからのアルケン生成の増感作用は亜酸化窒素の分解によって生成したOによることがわかった。このOはメタンの放射線分解によって生成したエタンおよびプロパンのみならず、原料メタンとも反応することを見出した。また、この反応はモレキュラーシーブ5Aの細孔内で起こり、その形状選択性のためにエタンの方がプロパンよりも反応性が高いことを明らかにした。これらの結果に基づいて、反応機構を考察した。
清水 雄一; 永井 士郎
Radiation Physics and Chemistry, 36(6), p.763 - 766, 1990/00
X(13X)およびY(SK-40)型モレキュラーシーブスの存在下において300Cでメタンを電子線照射すると、水素およびCまでの炭化水素が生成した。炭化水素の収量は、エチレンを除き、いずれも照射時間と共にわずかに増加した。SK-40上での炭化水素の収量はモレキュラーシーブ非存在下の収量よりも大きいが、13Xでは小さかった。このように、SK-40はメタンの放射線分解に対して触媒活性を示すが、13Xはほとんど示さなかった。13XおよびSK-40上での炭化水素分布はモレキュラーシーブ非存在下での炭化水素分布とほとんど同じであった。また、メタンの放射線分解に対する各種のモレキュラーシーブスの触媒活性の度合いは直鎖炭化水素の熱触媒反応における触媒活性の度合いとは著しく異なることが明らかになった。これらの結果を、エネルギー移動およびモレキュラーシーブの細孔径と生成分子の分子径との関係の観点から議論した。
清水 雄一
Radiation Physics and Chemistry, 36(3), p.291 - 294, 1990/00
固体酸性度に関連するSiO/A1O比の異なる4種のシリカ-アルミナ存在下でのメタンの放射線化学反応をモレキュラーシーブのメタン放射線分解における触媒活性との関連において研究した。主生成物は水素およびCまでの炭化水素であり、それらの収量は均一系に比べて著しく増大した。生成物収量、アルケン/アルカン比および炭化水素分布とシリカ-アルミナ中のAlO含量との間には相関が認められないことから、生成物収量の増大はシリカ-アルミナの固体酸性度に無関係であると考えることができる。生成物収量の順序およびその経時変化はモレキュラーシーブSAと同じであった。シリカゲルもまた高い触媒活性を示した。従って、モレキュラーシーブ上でのメタンの放射線分解における生成物収量の増感はその固体酸性には無関係であると結論できる。モレキュラーシーブの触媒活性をエネルギー移動の概念によって説明することを試みた。
成冨 満夫
保健物理, 22, p.189 - 207, 1987/00
放射性ヨウ素の物理的・化学的性状及び挙動の問題は、原子力施設において事故が起こる度毎に提起され、今なお未解決の分野を多くかかえている。その原因は、ヨウ素が種々の酸化状態をとるとともに酸化還元過程において有機ヨウ素を生成する性質をもつため、ヨウ素の物理的・化学的性状及び移行が事故条件によって著しく左右され挙動の工学的定量化を困難にしているためである。本報告は、過去に起こった代表的な原子炉事故(TMI-2,SL-1,Windscale-1及びchrenobyl-4)において、事故時の放出量の大小、放出の時間的推移に放射性ヨウ素の放出機構がどの様に係り、またヨウ素汚染がどんな物理的・化学的性状によって拡がったかについて、破損燃料、一次系内雰囲気、原子炉建家雰囲気及び周辺環境雰囲気の情報を基に解説した。
早川 直宏; 栗山 将
Journal of Polymer Science; Polymer Chemistry Edition, 14(6), p.1513 - 1517, 1976/06
直鎖ポリエチレンの微結晶粉末を空気中および真空中でCo--線で照射し、この試料について高分解能NMRを測定した。その結果、空気中照射の場合は酸化による切断のみがおこりゲルの生成は見られない。真空中照射の場合はゲルの生成によるスペクトルの線幅の広がりが見られる。このスペクトルはゲル部分とゾル部分に分割出来、両者の比を得ることが可能であることを示した。以上の結果ポリエチレン中の放射線化学反応は照射条件により大きく異なり、特に酸素の影響が重要であることが判明した。
熊田 高之
no journal, ,
極低温においては古典的な熱活性型反応はおこらず、代わりに量子力学的トンネリングにより反応障壁をくぐり抜けるトンネル反応が支配的になる。発表者はもっとも基本的な反応系であるH + H H + Hトンネル反応速度定数の同位体効果を確認した。また、最近発表者が注目している動的核スピン偏極による偏極中性子散乱実験用核偏極試料の作成においても放射線照射とトンネル反応を用いた手法が有用であることが確かめられた。
平出 哲也
no journal, ,
水の陽電子消滅寿命-運動量相関測定を温度を変化させながら行った。その結果、三重項ポジトロニウム(o-Ps;ポジトロニウムは電子と陽電子の結合状態)とOHラジカルとのスピン交換反応が見られ、その温度依存性から、10C以下において、「かご効果」により、スピン相関のあるo-PsとOHラジカルの反応が顕著になることが示されてきた。また、昇温時においては、この「かご効果」が、10C以上においても消えないケースが存在することが示されてきた。これは、水の中に、「かご効果」をもたらす構造が形成され、その構造が低温において安定化され、10C以上でも存在し続ける可能性を示している。試料表面は大気に接しており、試料中に溶け込んでいる二酸化炭素がこの構造に関係している可能性が、pH測定から示され、25C程度まで二酸化炭素が水中に保たれている可能性を示していると考えられる。